意識高い系ブックレビュー

まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」は本当に漫画でわかる良い一冊だった

まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」

この本は、トマ・ピケティの「21世紀の資本」を漫画で分かりやすく噛み砕いて説明してくれている作品だ。まんがでわかるシリーズはあまり手を出したことがなかったが、嬉しい誤算と言うか、非常にしっかりしている本だった。

まず、想像以上に漫画がちゃんとしている(ストーリー仕立てで分かりやすい)のが好印象なのと、きちんとピケティの主張が理解できる構成になっている。無駄を感じず、だが活字だらけで疲れるということはない。

とはいえ、原著を読んでいないので実際21世紀の資本をカバーしきれているかは私にはわからない。見た感じは問題がなさそうだが。

絵がきれいで、話も分かりやすく、説明文が長すぎない。

適度に思考停止せずに噛み砕きながら読めるので、結局頭に入ってこない絵本形式ではない。ピケティの全てをカバーしきれているとは思えないが、ある程度命題はカバーしていると思う。

自分で何が重要なのか取捨選択ができないトピックだとわかっているなら、こういうまんがでわかる、という手もありかもしれない。

この本はこんな方におすすめ

  • サクッとピケティの「21世紀の資本」を理解したい方
  • 漫画で読むことに抵抗がない方
  • 漫画部分も絵が綺麗でストーリーがしっかりしていて欲しい形

データ

  • まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」
  • 山形 浩生 (監修)
  • 小山 鹿梨子 (イラスト)
  • 単行本(ソフトカバー): 175ページ
  • 2015/6/12
  • 宝島社

まんがでわかったら苦労しな……あれ?

昔、まんがでわかる系の参考書を買ったことがある。

結局、各章の最初の数ページに漫画が出てきて概念の紹介を行い、あとは文字だけで「ここがポイント!」とかその程度のセリフ付きでしょぼくれたイラストがちょくちょく出てくるだけのものであった。つまりただの参考書である。

それがたまたまハズレだったのかもしれないが(そもそもアタリってなんだよという話ではあるが)、それ以降私が「まんがでわかる」系の本に手を出したことはない。

ただ、心の中で「超訳」とか「面白いほどよくわかる」とかついている本は買うまいとなんとなく決めていたところがある。

とはいえ、ピケティの「21世紀の資本」は原著は超分厚いし、そもそも私は経済畑の人間ではないし、なんなら「みんな読んでいるっぽいのに私だけわからないのはちょっと悔しい」という心理すら働いていた。

だから(だいぶ、というかかなりブームに遅れている感じはあるが)今回数年ぶりに「まんがでわかる」と銘打っている本に手を出したのだ。

しかしこれがなかなか良い本だったと思う。

「まんが」である時点で軽視されてしまうふしがあるだろうけれども、いやはやよくできている

まず根本的に絵が綺麗だと思う。

日本史や世界史の漫画を昔読んでいた身からすると、「勉強系(?)の漫画なのにこんなちゃんとしているものがあるんだ!」という気持ちになった。
絵が綺麗だと、がぜん読む気が出てくる。私はガキっぽいのだ。

原著を読んでいないから分からないけど、この本の伝えたいことはわかる。

しかし肝心の内容がスカスカだったら問題だ。
あるいはキャラクターがくっそ長いセリフで説明してこられてもうんざりする。

しかしこの本はそんなことはない。
ご都合主義的なのは仕方ないとして、ストーリーとピケティの議論がきちんとリンクしている。ちょっとややこしい場面でもセリフや解説文が長くなりすぎず、「これなら読めるわ」となる。

というより、「ちゃんとストーリーがある」というのが驚きだった。

まともに中身を見ないで買ったので、てっきり前述した参考書みたいに噛み砕いたピケティの議論の横にかわいい女の子のイラストがあって「ここをよく覚えようね!」とか明らかになんのバリューも追加していないセリフを言わされているものかと思ったら、そんなことは決してなかった。

ストーリーがあって、それに沿ってピケティの議論が展開されて、ちゃんとオチもあるしコラム的な解説もある。理想的だ。

とはいえ、繰り返すが私は「21世紀の資本」の原著を読んでいない。

だから「結局ピケティは何を言いたかったのか」については私は知る由もない。
だけれども、本書を見る限りはきちんと監修されており、コラムも充実しているからそうそう外れた内容は記載されていないだろう。

日経や週刊ダイヤモンド等のピケティ特集を見た限りでも、要点はきちんとカバーしているように見える。

半信半疑だったけれども、まんがで勉強するのもアリかもしれない。

百聞は一見にしかずという言葉があるし、文で追うよりかはぱっとグラフを見せられたほうがわかりやすいということも多々ある。
会社でプレゼン資料を作る際も「絵本かよ」というぐらい文章を削ることだってある。

何でもかんでも漫画にするのはよくないかもしれないが、何でもかんでも文章だから崇高ということもないだろう。

分からないまま原文を読み進めるよりかは、漫画でさっと理解したほうが得なのではないだろうか。

深みはないかもしれないないけれども、専門家がきちんと監修して「これを伝えるべき」と厳選したうえでストーリーを組んでくれている。

そう考えたら、だいぶ安心して読めるのではないだろうか?

結論

絵がきれいで、話も分かりやすく、説明文が長すぎない。
適度に思考停止せずに噛み砕きながら読めるので、結局頭に入ってこない絵本形式ではない。
ピケティの全てをカバーしきれているとは思えないが、ある程度命題はカバーしていると思う。
自分で何が重要なのか取捨選択ができないトピックだとわかっているなら、こういう手もありかもしれない。

21世紀の資本

21世紀の資本

トマ・ピケティ
4,840円(09/22 19:05時点)
発売日: 2014/12/08
Amazonの情報を掲載しています

 

  • この記事を書いた人

内藤エルフ

2013年東京大学法学部卒業。都内の米系投資銀行勤務。英語と日本語のバイリンガル。意識高い系そのものが好き。スターバックスでMacbookを開いてドヤ顔するのが好き(しかし仕事のファイルは持ち出し禁止なのでネットサーフィンのみ)。なお、コーヒーの味の違いはわからないけど、日本とアメリカのコーラの味の違いは7割の確率で当てられる。

-意識高い系ブックレビュー
-, , ,

© 2023 The Output