以前「まんがでわかる ピケティの21世紀の資本」の紹介をしたが、私はあまり漫画を読む人間ではない。嫌いとか否定するとかいうつもりは一切なく、十分に素晴らしい日本を代表するエンターテイメントの一つだと感じてはいるが、「まんがとビジネス書を混ぜてもな」という気持ちが強くあった。
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まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」は本当に漫画でわかる良い一冊だった
この本は、トマ・ピケティの「21世紀の資本」を漫画で分かりやすく噛み砕いて説明してくれている作品だ。まんがでわかるシリーズはあまり手を出したことがなかったが、嬉しい誤算と言うか、非常にしっかりしている ...
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小さい頃も漫画やイラストがついている参考書やドリルよりも普通の文字だけのもののほうがすんなりと勉強できた。
つまり絵や漫画が魅力的だと、そちらにばかり私は意識が行ってしまうのが。集中力が足りないのである。
ところが以前「まんがでわかる ピケティの21世紀の資本」を読んだらすんなりと内容が入ってきたし、もしかすると「コンセプトが難しいもののほうが、エピソード的に内容を掴むという意味で、「まんが」が合っているのかもしれない。
そう考え実は数冊「まんがでわかる」系のものを入手してみたが、今回はその一つだ。
今回もやはり非常に良かったので、ぜひご紹介したい。
この本はこんな方におすすめ
- 7つの習慣に興味があるけれども、本書に手を出すのが面倒な方
- ブログやまとめ記事以上だけれど、ずっしり新書未満で内容を理解したい方
- カバーのきれいなお姉さんに惹かれた方
目次(タップで開きます)
ブックデータ
- まんがでわかる 7つの習慣
- 小山 鹿梨子 (漫画)
- 単行本(ソフトカバー)175ページ
- 2013/10/11
- 宝島社
「7つの習慣」は漫画向きのうってつけな題材かもしれない
「7つの習慣」はずっと読んでみよう、読んでみようと思っていながらもなかなか手を出せなかった一冊なので(今更読むのもな、という謎の感情もあった)、こうして「まんがでわかる」化されているのはありがたかった。
持ち帰るべきメッセージさえ分かれば、何百ページも読みたくないというのが私の読書に対する純粋な感想だ。何を持ち帰ればいいのかさえ分かり、そしてそのメッセージをきちんと理解できるのであれば、それ以上はいらない。
もちろん、読書の面白さはただ重要となるボトム・ラインだけを読み込んでいくことでは決してないのはよく理解している。そのメッセージを支えている著者の感情、エピソード、例や比喩などが一冊の本を織りなしているのであって、それらを読み解くのが読書の醍醐味だ。
だが、純粋に「知識を得たい」という読書の場合は、その「支え」は理解ができるのであれば読み飛ばしてもいいと私は考えている。もちろん、メッセージを誤って解釈してしまうのは問題だが、その恐れがないなら良いだろう。
そういう意味で、この「まんがでわかる」は悪くないアプローチだ。絵の方が情報は多く入ってくるケースもあるし、ストーリーを通じて何かメッセージを得るのであれば、まんがはある意味でとても効率的なメディアだ。
「7つの習慣」とはスティーブン・コヴィーが1989年に出版した本で、原題は「The 7 Habits of Highly Effective People」、つまり「非常に生産性の高い人達が持つ7つの習慣」となる。全世界で数千万部売り上げている、ビジネス書のボスのような存在だ。
どのように優れた人格を持てるようになるか、どのように他人に理解されるか、どのように物事に優先事項をつけるか・・・といった要素を「7つの習慣」に昇華させて伝授するというものである。
すんなりと内容が入ってくる、わかりやすいドラマ仕立てのストーリー
7つの習慣を効率的に説明するために、各「習慣」をドラマ仕立てのストーリーにしている。舞台はバーで、そこに色々なお客さんがやってくる。
例えば「最優先事項を優先する」という「第3の習慣」の章では、とにかく時間にうるさい忙しいビジネスマンが登場する。忙しいから時間をきっちり管理してタスクをこなしている彼だが、実は「時間を管理している」のではなく「時間に管理されている」のではないかと気づきはじめる・・・本当に管理しなければならないのは「自分自身」なのだということに彼は気づく。
・・・というストーリーになっている。
まぁ、多少はご都合主義的だし、「うまく締めているけれども、ちょっと微妙だなこのストーリー」と思うことは少なくはない。
だが、大事なのはそのお話のリアリティとかではなくて、コヴィーが伝えようとしている「習慣」の各要素をうまく自分の中に落とし込めるかというところだ。
そう考えると、この(一見チープな)話は悪くない。キャラクターもわかりやすく、問題も気づきやすく、そしてわかりやすい形に話が進んでくる。ところどころでコヴィーの言葉が引用され、重要なポイントを教えてくれる。

原著の引用がところどころ出てくる
各章は「その章で紹介する習慣の命題」がまず出てきて、その後漫画パートとなり、漫画が終わると文章で「解説」が数ページ入る。
解説パートではグラフや図なども出てきて、解説が非常にわかりやすい。漫画が一番ページ数が多いが、導入と基礎コンセプトの解説がメインであり、より踏み込んだ内容は漫画の後の数ページの文章パートとなっている。
なので非常にあっさりしてはいるが、「重要ポイント」をおさえるという意味では非常に効果的だ。
「とりあえずの一冊」では終わらない、とても良い本
まんがでわかると書いてあるのだから、「ちょっとした足がかり程度の本かなぁ」と思っていたのだけれども、意外としっかりしていた。もちろん、これで原著の「7つの習慣」の全てが理解できるわけは決してないし、かなり端折っていることであろうとは思う。
だけれどもコヴィーが伝えたかったであろう、各「習慣」の肝となるコンセプトはきちんと本書でカバーできているものだと個人的には感じられた。
ストーリーはシンプルでご都合主義かもしれないけれども、そこで伝えたいコンセプトも蓋を開けてみればとてもシンプルなものだ。それをいかに身につけて「習慣化」するのかは読者の意志と努力によるところだろうが、本書でも十分行動に移せるだけのパワーがあると思う。
「とりあえずこれを読んで、よかったら原著を読もうかな」という気持ちで手を出しても良いかもしれないが、正直なところ、しっかりとこの本を読めば十分に効果がでると私は思う。「とりあえず漫画で」と「舐めて」かかったら、意外や意外非常にしっかりいた内容だったという感じだ。
解説もさすが7つの習慣関連のセミナーや研修を精力的に行っている「フランクリン・コヴィー・ジャパン」監修とあって、数ページのあっさりしたものではあるが実にしっかりしている。170ページの単行本で解説は全部合わせても30ページほどではあるが、漫画がしっかりしている分、そのページ数で十分にメッセージを伝えられていると思う。
おまけ 絵が可愛い
正直言って絵が可愛いと思う。私は前述の通りあまり漫画を読む人間ではないので評価は人によるとは思うが、とても丁寧に書かれていて、だけれどもゴチャゴチャしすぎてなくてすっきり読めると思う。

かわいい。
絵が綺麗だと、読んでいて気持ちいい。
まとめ 「7つの習慣」はきちんとこの本で学べる
私は最初は本書を疑って・・・とまではいかないけれども、「これで全部わかるわけないから、まぁ手始めに予習感覚で読んでおこうかな」という軽い気持ちで読み始めていた。
だが、内容は非常にしっかりしていて、漫画パートもよく考えられた「7つの習慣をきちんと読者に伝えるためにテーラーメイドされたストーリー」仕立てになっていて、すっと内容が頭に入ってきた。
この本をまんがと侮らず、一端のビジネス本であると敬意をもって接して内容をしっかりと熟読すれば、きっと「7つの習慣」は身につくものだと思う。当然原著のほうが多くのアイデアを内包しており得るものも多いであろうが、「7つの習慣」とは何で、どういう効果があり、どうしたら習慣化できるのかという点に特化するのであれば、本書もしっかりとその仕事を成し遂げてくれる。
普段難しい文字だらけの本を読んでいるなら、ちょっと息抜きに・・・だが、決して無駄にはならない読書としていかがだろうか。