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プレゼン資料作成術 外資系バンカーが教える伝わる資料作りのための6つの黄金ルール

プレゼン資料作成術

私は外資系投資銀行員として腐る程プレゼン資料を見てきた。本当に腐る程、だ。

コンサルのプレゼン、日系企業のプレゼン、他の外資系銀行のピッチブック、政府系の資料等…。

全てプロが作っている資料なのに、読みやすい!わかりやすい!と感じたものは一握りだ。それは何故なのだろうか。理由はとてもシンプルで、「読ませる」のか「聞かせる」のか、どちらに軸を置いているかに違いがあるからだ。

プレゼンというぐらいだから、聞かせることに軸を置かないといけない。レポートは読ませればいいが、プレゼンは目と耳で吸収する。

以下に私が経験上、そして多くの本を読んで「これだ!」と感じたものを記載したい。いわば数多くあるプレゼン資料作成術の濃縮版だ。きっとあなたの役に立つと思う。

この記事はこんな方におすすめ

  • 仕事でプレゼンテーション資料を作る方
  • 他者を説得するテクニックを学びたい方
  • プレゼンをぐっと良くするシンプルなルールを学びたい方

ワンスライド・ワンメッセージは基本

当たり前だが、一つのスライドで主張することは一つにしたい。

厚生労働省のスライド

厚生労働省のスライド(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184346.html より)

 

上記のスライドは「読ませる」スライドだ。これをベースにプレゼンをされても、正直ついていけないだろう。

例えば、「出生率が減少している」という事実をグラフで提示したとする。わかりやすいグラフだろう。

開始は例えば1960年で、合計特殊出生率が2.00だとする。 終了はそれなら2010年で、1.39だ。 途中、大きく増えたり減ったりした地点があれば、ラベルをつけて「ベビーブーム」とかなんとか書けばいい。

サンプルスライド

サンプルスライド

しかし、大事なのはここで新しい軸、例えば「社会補償に関わる政策」といったものを入れてはいけない

それだと、ワンスライドツーメッセージになってしまう。

このスライドはあくまで「出生率が減少している」というスライドだ。

このスライドを用いて、次のスライドではじめて「社会保障に関わる政策」を入れる。大事なのは、同じスライドをリサイクルして、次のメッセージを重ねていることだ。

サンプルスライド

サンプルスライド2 - 前のスライドを再利用する

前のメッセージを灰色にして目立たなくし、だが同時に参照できるようにする。馬鹿馬鹿しいほど単純でシンプルな話だが、これができていないプレゼンがあまりにも多い。

次に、ではその「社会保障に関わる政策」とは何なのかを具体的に説明していくといい。

おさらいすると、
「出生率が減少している」
「同時期の社会保障政策が影響している」
「その社会保障政策の内容は何か」
という三段階のメッセージを、一つのスライドにまとめるのは愚策ということだ。

これは絶対にしてはならない。

ココがポイント

一つのスライドに複数の論点をまとめるのは読み物ならいいかもしれないが、聞いて見せるプレゼンなら同じスライドに長時間かけてしまい、論理が停滞しているように見えてしまう

一つのスライドに長時間留まるのは、印象が悪くなる。

同じ文字列でも、複数スライドに論点ごと切り分けられている方がサクサク進んでいる印象で、かつ内容を咀嚼・理解しやすい

結論から入るのはなぜ大事なのか

結論から入れ、というのはあちこちで言われていると思う。メールは結論からかけとか、話すときは結論からいえとか、エレベーターピッチがどうとか、とにかく色々なところで言われている。そしてそれらは全部正しいと私は思う。

大前提として理解していただきたいのが、偉い人は時間が少ないし、あなたのプレゼンを聞きたい人は基本的にいないということだ。

あなたがプレゼンの天才であったり、ちょっとしたセレブレティであれば「あなた」のプレゼンに興味が湧くかもしれないが、基本的にはそういうケースは稀だろう。誰もあなたのプレゼンを聞きたくないし、聞きたいのはそのプレゼンを通して得られるメリットである。

ココがポイント

どういう提案なのか? どういう結論なのか? その根拠は妥当なのか?この点をハッキリさせてほしいのが、相手の要望だ。

もちろん、順序だって話さなければわからないことが多いだろう。であれば、最初にその順序を説明するスライドを入れれば良い。目次のようなものだが、もうすこしシンプルにして「提案・結論」「柱となる根拠をいくつか」を1枚にまとめればいい。

これが提案で、これが根拠です、以上。

このページをバン、と最初に出して、あとは順序立てて説明すればいい
その最初のスライドで聞き手はまじめにあなたの話を聞く価値があるか、携帯電話をいじるべきかを決められる。悔しいかもしれないが、そういうものだ。

各スライドのタイトルをわかりやすく、そしてタイトルも「何のスライドなのか、そして結論は何か」を書き出して、すぐに何が言いたいスライドなのかわかるようにする

そうすれば真剣に聞く必要があるスライドとそうでないスライドを聞き手が取捨選択して、プレゼンにメリハリがつく。

聞きっぱなしのプレゼンほど疲れるものはないのだから。

アニメーションを使ってはいけない4つの理由

アニメーションはなるべく避けた方がいい。

先ほどの例だと、先に使ったグラフがゆっくりグレーにフェードし、上に政策の年表がじわりと上がってくる…というのが良い演出に見えるかもしれない。

演出として効果的なのは確かだ。人は視覚情報から多くのことを取り込むので、見た目でイメージしやすいのは確かに有利だ。

だが、アニメーションは少しリスキーだ。

話している途中で次のスライドに行こうとしたのに、クリックしたらアニメーションがはじまってしまい少し待たなければいけない、という光景を見たことがないだろうか。

先ほどの長時間同じスライドで話さない、というのと同じで、アニメーション待ちはアホっぽく見える。せっかくスムーズに来ていたロジックが止まって見えてしまうのだ。

もちろん、練習してアニメーションのタイミングを把握していれば問題がないかもしれない。だが、以下の点を注意してほしい。

ココがポイント

一つは印刷版の資料を配っている場合、アニメーションは当然紙上では表現できないので注意すること。消える予定の文字が消えずに印刷されていたりする。

二つ目は、翻訳が発生する場合。英語版の資料を作成して画面を並べてプレゼンする場合が、翻訳業者によってはアニメーションを一回消してテキストで翻訳することがあるため、注意が必要だ。

三つ目は、複数画面や複数拠点で中継する場合。会場のメインモニターとサブモニタ、海外の拠点とビデオ会議でつないだ場合などでたま画面の同調が切れることがある。プレゼンのスライド単位であれば、ズレたらすぐにページ番号を合わせればいいが、そこにアニメーションが入っていたりすると余計な時間を要することになる。

最後に、質疑応答でプレゼンのスライドを前後する場合だ。「8スライド目について質問ですが」と受けたら速やかに8スライド目に移動しなければならないが、その際余計なアニメーションがあると受け手を待たせることになる。

以上の点からアニメーションは避けた方がいい

あなたがいなくても成立するプレゼンにする

 

たまに勘違いされる方がいるが、「スライドはシンプルにせよ」というのは情報をなくせというわけではない

確かに読みやすいスライド作りのためにはどっさり情報が入っているのは問題だが、だからといって主張を支えるデータや証拠が全くないのは論外だ。むしろ、そこをいかにシンプルに見せるかが腕の見せ所と言えるだろう。

とはいえ、どれだけ頑張っても「これ以上削ぎ落としたらわけがわからなくなる」という限界点が出てくるものだ。それは仕方がない。何もりんごとみかんを買ったらいくらになります、みたいな単純な話をしているわけではないのだから、サポートする情報も省略できる限界がある。

そういう場合は、注釈(フットノート)と、エビデンスをまとめた専用のスライドを用意するといい。

「詳しい概算やエビデンスは別紙にまとめております」と言えば良い。別紙はプレゼンの一部ではなく「読んでもらう資料」なので、ある程度は(読む方の目の疲労を考えるべきだが)、文字や数字でごっちゃりしていても問題はない。

もちろん、大前提として見やすい資料作りの一環としてロジックをきちんと単純に説明でき、最低限の数字を利用できる、ということがあるのは言うまでもない。

全ての数字の論拠をプレゼン資料に組み込む必要はもちろんないが、ある程度疑問質問が生じそうなものについてはあたりをつけておき、別紙やフットノートに用意しておくことをおすすめする。

私がここで大事にしているのは、「プレゼンターがいなくても伝わるプレゼンにする」ということだ。

ココがポイント

結果的に資料を見れば全てが伝わるようにするべきだ。上でも書いたが、「あなた」のプレゼンには誰も興味がないのだから、「あなた」がいなくてもきちんと成立して、内容が最初から最後まで理解できるようになっていなければならない。そこで全部書き出してレポートを作ってしまうのは愚の骨頂なので、うまくプレゼンの本体資料に載せる情報を取捨選択してほしい。

ページ番号やタイトル番号は必須

極めてシンプルな話ではあるが、ページ番号やタイトル番号(例えば 「2.1 新商品の説明 - 仕様」といったタイトル文)は大事である。

もちろんこれは質疑応答の際に「7ページについてなのですが・・・」と相手が聞きやすい、と言ったナビゲーション面はもちろん、私の経験上、多くの人はプレゼン資料を配られた際に、先にどんどん読み進めてしまう

人間として純粋に通常な発想で、早く結論を知りたいのだ。そういう欲求に答えてきちんとプレゼンを聞いてもらうために「結論ファースト」とあちこちで言われているのだが、先をペラペラめくってしまう衝動は誰にだってある。

ココがポイント

その際にサッとプレゼンターが説明しているページに戻れるように、ページ番号がやタイトル番号があると親切だ。本当に些細な点だが、これがあるとないとではページをウロウロする人が出てくる。何度も何度も見たことがあるから、私を信じてほしい(特に役員レベルになってくるとせっかちだ。すぐに後ろを見て計算をチェックしたりしはじめる)。

見やすい位置(図表や会社のロゴ、ディスクレイマーがかぶさっていないかなど)に置くことも大事だ。実に単純なことだが、こういう単純なことをきちんと拾っていくことがとても大事になる。

フォーマットはきちんと確認

最後にだが、フォーマットはきちんと確認しておいたほうがいい。

会社によってはPowerPointのバージョンが最新ではないかもしれないし、フォントもあなたの使っているものをいれていないかもしれない。スライドの比率も4:3ではなく、最近増えてきている16:9かもしれない。あるいはPDFで出す必要があるかもしれない。

会場にクリッカーがあるかもしれないし、レーザーポインターがあるかもしれない。そして、ないかもしれない。マイク片手でプレゼンをしなければならないかもしれない。

きちんと下準備しておけば問題がないものばかりだが、下準備しないととんでもない目にあうこともある。
ぜひ、気をつけて準備してほしい。

結論 プレゼン資料作りはシンプルだ

上記は実に「当たり前」のことを書いているように見えるだろう。数多なるプレゼン資料を見てきて出てきた結論がそれなのか、と。もっと神がかった、ジョブス的プレゼンの手法を教えてくれないのか、と。

だがわかってほしいのは、ほとんどの場合上記を全て守っている人はすくないということだ。

これを全部守れば自動的に勝利するとは決して言わないが、少なくともプレゼン面での失敗は少なくなるのではないだろうか。

なぜこれを守れないのだろう? と考えだすと、例えば会社の用意しているパワポのテンプレートがあるとか、上司の意向だとか、あるいは雇っているコンサルタントがいかにもコンサルっぽいゴチャゴチャグラフ資料を作りたいとかあるかもしれない。あなたのできる範囲は限られているかもしれない。

だけれども、これらのルールを覚えて可能な限り実践してほしい。

本当に、見る側からしても、負担の少ない資料なのだ。

負担が少ない、ストレスが少ない。単純明快で、きちんと根拠がある。これができるだけで、本当に違うと私は思う。

心の底から、上記の内容が皆様のプレゼン資料作りの見直しのきっかけになれば嬉しい。

  • この記事を書いた人

内藤エルフ

2013年東京大学法学部卒業。都内の米系投資銀行勤務。英語と日本語のバイリンガル。意識高い系そのものが好き。スターバックスでMacbookを開いてドヤ顔するのが好き(しかし仕事のファイルは持ち出し禁止なのでネットサーフィンのみ)。なお、コーヒーの味の違いはわからないけど、日本とアメリカのコーラの味の違いは7割の確率で当てられる。

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