意識高い系ブックレビュー

「GRIT やり抜く力」は行動を促してくれる自己啓発のお手本のような本

GRIT やり抜く力

基本的に私は何かを最後までやり遂げることが少ない人間だ。達成感を感じたことなんて大学を卒業した時ぐらいだし、なかなか最後まで完成完了させることができない。

結局途中で飽きてしまったり、自分にはできないと判断してやめてしまったり、諦めの連続だ。

この本はそんな私をある種論理的に、科学的に分析してくれる。

やり抜けないのは何故なのか?

そしてより大事なのは、何をしたらやり抜けるのか?

ベストセラー作品が語るテクニックを学んでみた。

この本はこんな方におすすめ

  • 最後までやり抜ける力の源を知りたい方
  • 継続する力がある人とない人の違いを知りたい方
  • ずばり、どうやったらやり抜く力が身につくのか知りたい方
  • やり抜ける子供の育て方を知りたい方

ブックデータ

  • GRIT やり抜く力
  • アンジェラ・ダックワース (著)
  • 神崎 朗子 (訳)
  • 単行本(ソフトカバー)376ページ
  • 2016/9/8
  • ダイヤモンド社
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

アンジェラ・ダックワース
1,724円(05/28 22:19時点)
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やり抜く力がある人とない人の差は何か

本書はこの疑問から出発している。鍛え抜かれた軍人でもやり抜くことができないものを、一見平凡な普通の営業マンがやり抜けたりする。そこの明確な違いは何なのか、そしてどうやったら結果を出すことが出来るのか

シンプルだけれども、確かに気になる問題だ。

私はどちらかというと机に向かってジッとするのが苦手な子供だったので、勉強はあまり得意ではなかった。暗記とか読書とか、時間をかけて一つのことに向き合わなければならないものはひどく苦手で、すぐに飽きて放り出しては外に遊びに駆け出していたようなガキンチョだった。

しかし、それは生まれつきの才能なのだろうか?

人は生まれつき、「やり抜く力」があったりなかったりするのだろうか。

著者はそれは違うと考える。ある程度の生まれつきの才能はあるかもしれないが、基本的には彼女が「GRIT」と呼ぶ、「やり抜く力」は訓練して培うことが出来る

そのために何が必要なのか、「継続」の一言でまとめることができる。

結局継続かよ、当たり前だろうと思うかもしれない。実際、そう思う人は多かったみたいで、この本のネガティブな評価を見ると「結論が当たり前過ぎてがっかりしました」といったことが書かれている。

この本の伝えたいことは、「やり抜く力」が身につく魔法の方法ではない。そうではなくて、やはり調べてみた結果、なぜ「継続」がベストなのかを語ってくれているのだ。そこを履き違えてしまうと、「何かワクワクするすごい最先端のメソッドがあるのかも」と本書を手にとってしまう。



やり抜く力の、シンプルな根源

結論はシンプルだが、それを実行するのは難しい。

著者はそれをよくわかっている。彼女自身「やり抜いた」人間だが、それが生半可なことではなかったことをよく知っている。そして彼女が研究してインタビューしてきた数多くの「やり抜いた」成功者たちの体験談も、何か魔法のメソッドでトントン拍子にいったわけではないということを説明している。

では本書の目的は何か。それはモチベーションだ

よく「自己啓発本」というコーナーが本屋にあるが、正直なところ私はほとんどが眉唾と言うか、「手にとってもなぁ」と思っているところがある。というのもこういった本はあなたを肯定してくれて、励ましてくれるが、何か新しいものをもたらしてくれることがあまりないからだ。

知識を身に着けたいなら別の実用書を手に取る、そっちのほうが有意義、と思っている自分がいる。

だからこの本を手にとったときも、「やり抜く力」を科学して、何か最先端のメソドロジーがのっているのかな」と思ったのだ。

蓋を開けてみればそうではなかった。
だが、それは決してがっかりするものではなかった。

この本は、「やり抜いた」人たちのエピソードを多数載せている。殆どのページに何らかの体験談が載っているんじゃないかとと思うぐらい、エピソードが満載だ。そしてそれが、個人的にモチベーションにつながると思った。

この本を読んでいると、「私も頑張ろう、やり抜こう」という気持ちになるのだ。それは決して情に流されたとか、感動したからとか、そういう(こう言ったら悪いが)チープな理由だからではない。純粋に、「やった人」が「どうやってやったか」を淡々と述べていて、「これならできそう」「やったほうがいいな」「やらない理由はないな」と思わせてくれるのだ。

そんなバカな、単純すぎるだろうと思われるかもしれない。私自身、自分はこんなに単純で影響されやすかったかな?と思うほどだったが、この本はまさにそこに焦点をあてている。

繰り返すが、魔法の方法なんてないのだ。

ひどく「当たり前」のことを書いている。

だが、成功の要因はそれだけではなかったのだ。インタビューで多くの人が語ったのは、ずば抜けた才能に恵まれながらも、能力をじゅうぶんに発揮しないうちに、挫折したり、興味をなくしたりして辞めてしまい、周囲を驚かせた人たちの話だった。
失敗しても挫けずに努力を続けるのはーーどう考えてもたやすいことではないがーーきわめて重要らしかった。
本書 p.21より

そりゃそうだろう、と思うことだ。

だが、その当たり前をしっかりできている人がどれだけいるだろうか

本当に恥ずかしい話だが、この本を手にとった理由は「自分には継続するだけの胆力がないけれども、この本を読めばもしかしたらショートカットできるかも」というものだった。それを真っ向から、「継続しろ」と言われてしまえば、一瞬「ムムッ そんな当たり前なことを言われるために1700円払ったんじゃないぞ」と思ったが、「しかし考えて見れば恥ずかしいことに本当にその通りだ」となる。

でも、どうやって継続したらいいのさ

継続が大事、それはよくわかった。継続すれば、やり抜けるし、成功できる。「継続」と「やり抜く」は同じなように見えるけれども、前者はとにかく続けてチャレンジすることだ。その結果として、やり抜いて何らかの実績が伴ってくる。

そこまではわかった。
問題は、「継続」する力も「やり抜く力」もない人間はどうしたらいいのか、ということだ。

この点について、著者は例によって無数のエピソードを通じて、「こういうものはどうだろうか」という提案を出してくれる。

どのように適切な目標を設定するか。
その目標を見失わないようにするには、どうするか。
最初に厳しく自身を戒めると、かえって伸びなくなるからしないほうがいい。
正しい練習の方法はなにか。

どれも短く触れられているだけだが、非常に興味深い内容ばかりだ。

特に練習は闇雲にやっても意味がない、という話は面白かった。

「意図的な練習」の基本的な要件は、どれも特別なものではない。

  • 明確に定義されたストレッチ目標
  • 完全な集中と努力
  • すみやかで有益なフィードバック
  • たゆまぬ反省と改良

しかし、この4つの項目すべてに該当するような練習を、ふつうの人は何時間くらい行っているだろうか? ラクな道を選んで最低限の努力しかしない人も多い。「意図的な練習」をする時間など、実質ゼロではないだろうか?
本書 p.193より

全くもって耳が痛い。確かに私が何か頑張ろう、と思ったところで、この4つの項目をチェックしていることなんてまずない

批判することは非常に簡単だ。「そりゃ、これだけやれば結果がでるだろうよ」とすぐに言える。だけど、それはつまり「やっていないから結果がでない」ということではないだろうか。4つ全ての項目に該当する練習をすることは難しいかもしれない(特にフィードバック等、第三者を伴うもの)が、そのうちひとつでもきちんとこなすことができれば、確実にポジティブな結果がでるというのは納得してもらえるだろう。



「答え」はここにある。

これ以外にも、色々な要素を出してきている。

そしてどれも「さあ、今からフルマラソンを走ってみてね!」といった不可能な話ではない。やればできることだ。だが、やらない自分がいる。

腑抜けた性格の矯正方法も多少は載っているが、やはり気を奮い立ててぶつかっていくのがベストだ。

結局はこころの持ちようだけれども、「やりたくなる」ようにこの本は見事に整えられている。様々なエピソードに彩られて、「私でも、頑張れるかもしれない」と思ってくる。そのモチベーションが何よりも大事だし、何よりも結果につながるようにしてくれるのだろう。

子供にやり抜く力を身に着けさせるには?

こんな一節がある;

じつはおとなになって成功や失敗をしたといき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どものころの「ほめられ方」によって決まる確率が高い。
本書 p.242より

本書では実際にいくつか例を出しながら、「成長思考、やりぬく力を伸ばす褒め方」を紹介している。最近は「子供のほめ方」の本も結構出ているようだが、それと似たような感じだ。

失敗、つらい経験、様々な子供が経験する要素を、うまく転換して「成長」するマインドセットへとつなげられるように、親はどうするべきか。丁寧に説明してくれているので、子供の自立心、好奇心、成長思考を醸成したい方にはとても参考になるだろう。



まとめ 簡単ではないが、確実に成功へとつながる

「GRIT やり抜く力」で語られている要素は全て「あたりまえ」なことかもしれない。だが、その「あたりまえ」をきちんとできていない人が多い。

正論を言われても困るよ・・・と思ってしまう自分がいる。それはつまり、正論が正論だとわかっているにも関わらず、着手できていない自分がいるということだ。

「あたりまえ」なことは苦しかったり、やる気が起きなかったりする。だから人は楽をしようと、近道を探そうとする。だがそれでは「継続」できないし、ひいては「やり抜く力」には決してつながらない。

そこを著者はよく理解して、ではどうやったら「あたりまえ」のことに着手できるようになるのか、いくつか方法をあげてくれている。自分にするべき質問、目標を明らかにするためのエクササイズ・・・様々な要素を出してくれている。

だが結局、第一歩は自分で踏み出さなければならない。寝ている間に勝手に成長、なんてことはまずありえない

それが一番難しいことではあるが、著者は数多くの魅力的なエピソード・小咄を盛り込んでくれる。人は他人が何かをしていると、感化されて真似したくなったりするものだ。その心理をうまく利用して、「私もやりたい!」と思わせてくれる

データに裏付けられた、ガチガチなロジカルな本が私は大好きだが、この本は(もちろんたくさんデータも出てくるが)そうではなくて、多くの人の実体験を直接語ってくることによって、心に働きかけている。時にはそういうエピソードが、行動を起こさせてくれるのだ。

「そんなアタリマエのこと言われてもな」と思っているあなたこそ、この本を手にとってほしい。そしてこの本を読んでいるうちに「アタリマエのこと、やってみたいかも」と思うに違いない。そうなれば、きっとあなたも「継続」への第一歩を踏み出せるはずだ。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

アンジェラ・ダックワース
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  • この記事を書いた人

内藤エルフ

2013年東京大学法学部卒業。都内の米系投資銀行勤務。英語と日本語のバイリンガル。意識高い系そのものが好き。スターバックスでMacbookを開いてドヤ顔するのが好き(しかし仕事のファイルは持ち出し禁止なのでネットサーフィンのみ)。なお、コーヒーの味の違いはわからないけど、日本とアメリカのコーラの味の違いは7割の確率で当てられる。

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