私は習慣やルーチンワークの信奉者だ。過去もそのような記事を書いていることからわかるように、自分を変えたり結果を出したりするためにはまずは自分の日々の習慣や環境からの見直しが必要だと感じている。
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この「自分を変える習慣力」はまさに私が言わんとしていることを、とてもシンプルだが丁寧に(そして私よりずっときれいでロジカルな日本語で)解説してくれている。この手の本はたくさん出ているので内容的に目新しいものはあまりないかもしれないが、とても丁寧で優しいスタンスからの解説はまさに「あなたのパーソナルなコーチ」のような本だ、
実際に著者はコーチングのプロなので、とても自然な形で本書を読み進めさせる文章力やテクニックに長けている。
目的意識をしっかりと持つことで、三日坊主を避けて日々の成功を積み重ねていける、実践的なメソッドを紹介している。あまり自己管理に自信がない方なら、この本はとてもよい指針となるだろう。
この本はこんな方におすすめ
- 三日坊主になりがちな方
- 読書や片付け等、どのように手をつけたらいいかわからないという方
- コミュニケーションの円滑化を狙いたい方
ブックデータ
- 自分を変える習慣力
- 三浦 将
- 単行本(ソフトカバー)240ページ
- 2015/11/24
- クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
「自分を変える習慣力」はとても初歩的だが、とても大事な内容が網羅されている
本書のターゲットは比較的この手の本を読まない人だろう。あるいは帯にデカデカと書かれた「食生活や働き方、体型、お金の使い方、全てが変わった。」という文句に目を引かれた人かもしれない。
内容的に、こういう本はごまんと存在する。親玉的なもので「7つの習慣」があるし、それ以外にもビジネス書籍や自己啓発本の類で習慣を身に着けさせる本はたくさん存在する。私はこの手の本が大好きなのでついつい買ってしまうが、普通の人なら一冊か似冊読めば十分かもしれない。
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「まんがでわかる 7つの習慣」は漫画も内容も非常に良くできている侮ってはいけない一冊
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逆に言えば、あまりこういう本を普段読まない、行き詰まっていると感じている人ならばこの本はそういう数多なる「自分を変える」系の本のなかでもおすすめできる一冊だ。
その理由としては、内容のシンプルさと実現可能性の高さにある。
あまり精神面にこだわりすぎて、理想論とかスピリチュアルなものを語られても困るし、かといって具体的だけれどもレベルが高すぎて手が出せないのも困る。この本はちょうどいい塩梅でレベル感を設定してくれていて、習慣を強化していくことが何故メリットにつながるのかを解説しつつ、実際にすぐに取りかかれるレベルのアドバイスをしてくれる。
程よく、くどくならない程度に実際の成功者の例を出したり、あるいは幸福度に関する研究成果を出してきたりと、箸休めやモチベーションになる要素を取り入れてくれているのもありがたい、
本当に大事なコンセプトはきちんとカバーされているという印象だ。
とはいえ、内容は少しシンプルすぎるかもしれない
最初に書いたように、「自分を変える習慣力」は比較的この手の本を読まない人向けの本のように感じられた。初心者向けと書いたのもその理由だ。
ある程度仕事に本気で向かい合って取り組んでいて、日々改善を意識している人であれば「そうだよね」と思うような事が多く出てくるかもしれない。あるいはこの手の自己管理の本を何冊か読んだことある人であれば、出てくるアドバイスや小ネタも「知っているなぁ」となるものばかりになるかもしれない。
裏返して見れば、どのような本も似たりよったりになりがちなほど、本当に伝えるべきメッセージや大事なコンセプトは一握りなのかもしれない。
睡眠習慣、食生活、姿勢、コミュニケーション術等多角的にアプローチしているので何かしら得るものはあるとは思うが、やはりとてもシンプルな内容だ。
もちろん、シンプルなのが悪いというわけではない。繰り返すように、本当に大事なコンセプトというのはシンプルで万国共通なものになりがちだ。問題に対するアプローチは無限にあるかもしれないが、多くの人にフィットする意識の有り様というのはやはり最善手に近いものが存在するのだろう。
この本は良きモチベーターとしてあなたに自己の改善を促してくれるし、そのアドバイスは全て全うだが、必ずしも「深い」情報ではない。アドバイスに裏側にある「なぜ」を追求したいのであれば、この本は正解ではない。広く、正しいと思われているコンセプトを色々と紹介し、それぞれについて深く掘ることはなく、ただベーシックな論点を提示してくれる。
即効性が高くて、すぐにでも生活に取り入れられるものを欲していて、自分を改善していこうという意識が強くあるのであれば、この本は非常によい一冊となるだろう。だが、それ以上を求めるのであればよそをあたったほうが良いかもしれない。
目標づくりの意識に「気づき」を与えてくれるのは素晴らしい
習慣の作り方の本は多くあるし、皆さんもなんらかの日々の生活や仕事やコミュニケーションに対する決まったアプローチが何かしらあるだろう。ルーティン化した「習慣」は無意識で走らせることができるのでとても有意義なのは周知の通りだ。
この本で素敵だなと思ったのは、その習慣面の話だけにとどまるのではなく、習慣を作る上で大事となる「目標」設定についても触れていくところだ。
目標って、どうやって設定したらいいのだろう?
目標を作る際に、気をつけるべき言葉の選び方とは?
こういう要素に触れながら解説をしてくれるのは、ただの習慣・自己改善の本にとどまらないで終わってよかったなと感じた。
またそれ以外にも、アプローチの最適化を図るための「断捨離」の章も存在する。
ただモノを捨てる断捨離ではなく、
仕事習慣の断捨離
読書の断捨離
意思決定の断捨離
といった具合に、いくつかの軸の考え方を提示してくれているのは面白いと思った。習慣を作ったり、自分を管理していく過程において、そもそもどのように自身の狙おうとする効果を知り、それに近づくアプローチを決定すればいいのかを考えていくことができるのだ。
まとめ 「自分を変える習慣力」は少し物足りないかもしれないが、迷ったときのよき足がかりとなる本
正直なことをいうと、この本であまり新しい持ち帰りはなかった。だがそれだけ著者が本当に大切な要素に絞って、適切な議論の進め方をしているということだろう。
特筆するべきなのはこの本の内容そのもの以上に、構成の丁寧さを文章の優しさだ。親身になってあなたに寄り添って、コーチとして人生における様々な局面に対して適切な道を取れるよう、アドバイスしてくれるのだ。
内容のシンプルさも相まって、すぐに読破できてしまう本だが、その分この本に書かれている行動原理に沿って動くことができれば、きっと良い結果を得られるものだろう。
多くの似たような本があるなかで、入門用に最適な一冊ではないだろうか。