超とか高速とかなんとか術とかがつく本はハズレが多い気がする。
過剰な宣伝で人を釣ろうとしているのが目に見えていて、怖いもの見たさで買ってみると基本的に後悔する。
わかっていながらも、その罠に飛び込んでいきたい自分がいる。そして飛び込んだ。
そして、意外にも悪くなかった。
この本はこんな方におすすめ
- 暗記が中心な試験勉強などを効率的に行いたい方
- 完璧主義で、時間をかけて隅から隅まで勉強してしまいがちな方
- 決まった場所じゃないとうまく勉強に集中できない方
目次(タップで開きます)
ブックデータ
- 超高速暗記術 忙しくても一発合格
- 鬼頭 政人
- 単行本(ソフトカバー)191 ページ
- 大和書房
見た目からは想像できない真面目な本
この手のタイトルの本はタイトル詐欺が多い。
無駄に大きなフォントで大してレベルの高くない内容を語られる残念な本が非常に多い印象がある。しかも漫画やイラストが多かったりするとなおさらだ。
しかしこの本はとてもよいと感じた。正直なことを言うと、そんな「魔法の暗記術」というものは存在しないのはわかっているし、ある程度試験慣れした人間なら当たり前の内容が入っているかもしれない。
だからといって得られないものがなかったわけではない。
私はどうも完璧主義者(しかし完璧には程遠い)からなのか、「全部きっちり綺麗に」単語帳などを作りたくなるタイプだ。たとえ「これ知ってる」という単語が出てきたとしても、「忘れたらどうしよう」というリスクヘッジばかりを考えてその単語の暗記カードも作ってしまう。
だけれども試験対策という限られた条件を考えるとこれは悪手だ、ということをこの本は気づかせてくれる。ちょっと考えれば誰だってわかることだが、「ちょっと考える」ことを怠ってしまうのが人間だ(というか私だ)。
その他にも色々とテクニックが書かれているので、知っているものがほとんどだとしてもマインドセットのおさらいという意味では悪くないだろう。
一つだけ気になった点
ただ私が一つだけ異をとなえたいのは「殴り書きでも良い」という著者の主張だ。
確かに完璧に綺麗に単語帳などを作る必要はないかもしれないが、私は「脳は楽をしようとする」という点を強調したい。
どういうことかというと、「この汚いやつの答えは◯◯だな」とか「この端が折れているカードは確か◯◯だったはず」という風に、「そう覚えたらアカン!」という覚え方を人はしてしまう傾向がある。
例えば単語アプリで勉強していると、同じ順番で出てくる問題などがあると問題文ではなく「これの次はこうだったな」という覚え方をしてしまう。
もちろん私だけかもしれないが、そういう人間の習性があるのは否めない。
だから私はなるべく「特徴的」な単語帳などは作らないようにしている。単語ではなく形を覚えてしまっては意味がないからだ。
もちろん、記憶の宮殿というか、何かに関連付けて覚えるというのは間違っていないと思う。
先程の例で言えば、英単語を見たときに「あ、これって確か走り書きしたあの汚い単語カードものだったな」というトリガーが走り、そこから「その意味は・・・」となる。汚さが結果に関連付けられた、トリガーとなる形式だ。
とはいえ、私はあまりこれが正しい覚え方とは思えない。
トリガーを使って何かを惹起するのは良いのだけれども、裏を返せばそのトリガーがないと結果につながらないということになる。できれば余計なものを挟まないで、結果に直結するようにしたいところだ。
もちろん、単発の試験で試験が終わると同時に知識が流れ出て良いものであれば、それでもいいかもしれない。だが大半の場合、意味があって試験を受けるのであって、資格も取得してそこで終わりというわけではない。
今後利用できる知識にするためにも、変な覚え方は避けたほうがいいと個人的には思う。
超高速ではない
さらに言ってしまえばこれは「超高速」な暗記術の本ではなかった。
そういう意味ではタイトル詐欺だったかもしれないが、これは(私の超勝手な妄想だが)著者の意見ではなく売り出し方の出版社の問題かなと思った。
効率的に進められるようになるがゆえに高速になる、ということは理解できるが、なにか特殊な方法をしているわけではない。でもそれは当たり前のことだ、そんな魔法の方法があるわけがない。
おそらくは「完璧を求めてはいけない」というアドバイスなどで「超高速」ということなのだろうが、ちょっと違うのでは、と個人的には感じた。とはいえ、内容に文句があるわけではない。タイトルの書き方がいけないのだ。
まとめ 普通の読み物としても面白い本だった
正直もう少し薄っぺらいお話で終わるのかな、と思っていたけれども、蓋を開けてみれば著者の体験を交えて色々と面白い話が展開されていた。語呂合わせとかは個人的に好きな分野だし、どのようなアイデアがあるかなど興味深かった。
忘却曲線もしっかりとそれについて読むというのも新鮮だったし(といっても数段落で簡潔な内容だが)、やたらと文字が大きくて行間が広いしょうもない本になるかなと思っていたらいい意味で裏切られた。
できれば著者による「暗記」だけではなく、それ以外の普通の勉強のアプローチの本も今後見てみたいと思った。