読書法の本はあまり手にとったことがないが、ベストセラーということで購入。だが、少し残念な結果となってしまった。
- 能動的ではない読書法を説明
- 例が随分とレベルが低いが、書かれている内容自体は悪くない
- 東大推しがあまり必要だとは思えないが、読書の基礎を固めるというアプローチはしっかりしている
- とはいえ、やっぱり想定読者のレベルが低すぎる
論理的思考を培うための読書術を説明するという点でこの本は何も間違ったことはしていない。書いてあることはごもっともだし、実践していないのであれば実践するに越したことはない。ただ、想定している読者のレベルが低すぎるのかもしれない、内容はかなり単純でためになるとは言いづらい。
この本はこんな方におすすめ
- とにかく読書の指針を得たい方
- ただ頭から読むのではなく、読書の別の視点を得たい方
目次(タップで開きます)
ブックデータ
- 「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書
- 西岡 壱誠
- 単行本: 282ページ
- 2018/6/1
- 東洋経済新報社
東大という単語を良いも悪いも気にしたらいけない
東大読書というタイトルから醸し出される「こいつぁヤベェやつだ」感はやはり拭えない。
度々現れる「東大生は~」というフレーズは正直ウザイ。
私は一応東大卒だからつっこみを入れる資格はあるだろう。でもそれもマーケティングのためなのだろうし、あまり考えないほうが良いだろう。著者は東大生なのだし、別に間違ったことは言っていないのだから過剰反応する必要はない。
内容自体はとってもシンプルに書かれていて、とっつきやすい。嫌味なしで、二時間程度もあれば読めてしまうのではと思う。さくっと読めて、すっきりとした読了感だ。
よく「毒にも薬にもならない」というフレーズがあるが(本書にも出てくる)、間違いなくこの本は「薬」になる。ただ、それは市販の風邪薬程度の、気休めレベルの薬でしかないかもしれない。
あっさりすぎて、シンプルすぎる
シンプルなのは良いことだ。そしてトピックを絞っているのも良いことだ。読書術から脱線しないし、きちんと掲げている命題について説明している。
ただ、いかんせんその内容がシンプルすぎる。ろくに中身を見ないで買ってしまった私も悪いが、「いや、そりゃそうだろうよ」という内容の羅列だ。ただ勘違いしないでほしいのは、世の中の大半の人間は「そりゃそうだろうよ」ができない。私含めて、当然のことを当然にやれないのだから世の中はこんなにもハウツー本で溢れている。
私含めて、当然のことを当然にやれないのだから世の中はこんなにもハウツー本で溢れている。
だからその「気づき」になれば良いと思うし、本書のシンプルさや例のチープさに苛立っていてはいけないと思う。だって、「そりゃそうだ」をできていないことのほうが多いのだから。
とはいえ、内容を責めるわけにはいかない
例えば私が経済学の専門家だったとして、「よくわかる!経済学」という本を読んで「知っている内容ばかりだからこの本はクソだ!」と言うのはおかしいだろう。それと同じ事で、私にはこの本が正直合わなかったけれども、それで責めるのは間違っていると思う。
そう、この本は正直言って相当に低レベルだ。
こんなこともできない読者を想定しているの?と思うぐらい低レベルだ。
例えば次のような文章がある:
「精神疾患・精神分析・異常心理学……これ1冊で心理学の全てがわかる!」と、書いてあるならば、「精神疾患についてわかる」「精神分析がわかる」「異常心理学が載っている」「その他、心理学について多くのことがわかる」と、1枚の付箋に1つの情報を書きましょう。
本書p.36より
だけれども、「低レベル=クソ」ではない。悪いことでもない。
この本がドンピシャの人がいるだろうし、そういう人にとってはとんでもなく良い指標になると思う。
非常に、非常に丁寧に書かれているし、間違ったことは言っていない。これは非常に良い本なのだ。ただ、繰り返すけれども私には合わなかった。
私は結局、「東大読書」ができていなかった。
じゃあなぜこの本を手にとってしまったのだろうか。それはこの本がベストセラーとして平積みされていたからだ。
ろくに中身を確認せずに買ってしまった。
そういう意味では、この本の言っている「東大読書」は私はできていないことになる。だって事前リサーチなんて何もしていないんだから、これは「悪い本の読み方」だ。
だから私はこの本を批判する資格はないだろう。いやはや、そこまで著者が考えていたのであれば脱帽だ。
東大読書ができてない私に、そのことをそっと気づかせてくれた。皮肉じゃないよ。本当に。