フレームワークや思考法を説明する本は多くあるしちょっとでも興味ある人なら一度は触れたことがあると思う。
正直なところ、この点他の本とそこまで変わりはない。確かに実務上こういう時に役に立つ、こういうフレームワークはあまり役に立たないなど説明は一通りなされているが、比較的限定的な例であったり、あまりピンとこないものが多かった。
一番あっさりとしていた「大前パワー」のセクションが個人的には面白かった。確かに「なら、どうするべきか?」を説明していないが、詳細に説明できるようなものならば誰しもできているわけだし、何らかの「気づき」のきっかけになる程度の今のレベル感でよかったと思う。読んでいて面白かった。
総合的に見て、長いし冗長なところもあるけれども、読んで損は決してない。仕事で使ってみたいなぁと思わせるような要素にあふれている、刺激的な本だったと思う。
この本はこんな方におすすめ
- コンサルの問題解決方法を知りたい方
- フレームワークを仕事で活かす方法を知りたい方
- 大前研一氏がなぜすごいのかを知りたい方
目次(タップで開きます)
ブックデータ
- コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法
- 名和 高司
- 単行本(ソフトカバー): 512ページ
- 2018/7/12
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
すげぇ経歴の人が書いたしっかりとした本
とりあえず私は帯から入る人間だ。
マーケティングの餌食になることを承知しながらも、帯に素敵な言葉が躍っているとワクワクする。大前研一推薦とか書かれちゃった日には「読むしかねぇぜ・・・」となるミーハー人間だ。
そして私は肩書に弱い。
肩書・学歴、そんなものに踊らされる人間になっちゃいけないと一人でアウトローみたいな気持ちに浸っていた中学時代を過ごしたものだが、今やマッキンゼー出身とか平服するしかない。だって私はマッキンゼー出身じゃないんだもん。MBAもないし。
この本の著者の経歴はピッカピカだ。確実に成功しているし、確実に特別な何かを持っている。日本の会社も経験しているし、海外の大学も経験しているし、コンサルの二大巨頭を経験している。私がとやこういえる立場ではない。
だから私はこの本を読むとき、「自分より頭がよくて経験がある人が書いた本なんだ」という前提をもって読んだ。納得いかないところ、気になったところがあれば「しかしこの人の経歴を考えるに、私のほうが間違っているんだろうな。どこがおかしいんだろう?」と読めた。前に紹介した「東大読書」が効いていたのかもしれない。
-
-
「東大読書」は毒にも薬にもならない当たり前が詰まった本
読書法の本はあまり手にとったことがないが、ベストセラーということで購入。だが、少し残念な結果となってしまった。 能動的ではない読書法を説明 例が随分とレベルが低いが、書かれている内容自体は悪くない 東 ...
続きを見る
とにかく、そういう前提でちょっといつもと違う読み方ができるのは本当に楽しい。
本としての面白さはそんなに無いかもしれない
私はストーリー仕立ての本が好きだし、漫画で説明されるのも好きだし、面白おかしいエピソードが満載な本は例外なく好きだ。
残念ながら、そういう面白さはこの本はない。
小気味よいテンポでしっかりとしたロジックを積み立てて「こうです。次はこうです。だからこうです」と進んでいく。ちゃんと実例を踏まえて、「こういう経験を私はした。だからこれはこうだと考える」とバッサバッサ進めていく。
とはいえ、説得力がちょっとない。
これは内容が間違っているとかそういう問題ではなくて、純粋に「面白くない」からだ。
著者の膨大な経験・知識というバックグラウンドがあってはじめて成り立つ論理があったとしても、結論からスタートしているから「本当に?」と思ってしまう。だからといって超長い本は読みたくないし、結論ベースなのはうれしいし、私のわがままなのだろう。
大前パワーは面白い
フレームワークの説明で(論理的な正しいけど)無味乾燥な部分が続きちょっと砂漠を歩いているような気分になった後に、大前研一氏がなぜすごいかを滔々と語るセクションがある。わりと急展開だし、いきなり大前研一氏が出てくるんかいと読み飛ばしちゃおうかなオーラを出していたところ、ここが意外やすごい面白かった。
実は内容としてはそんなに深いものではないけれども、大前研一氏がいかにすごいかについて語られている。そしてその内容は月並みな表現で悪いが「はっとする」ものが結構あった。言うは易く行うは難しというが、まさにそれで、「全く違うものをいくつかくっつけて、それらが有機的に組み合わさった新しい論点を生み出す」とかすごいものがある。
自分にはできないし、今の仕事柄そういう創造性に富んだことはあまりお呼びではないのだが、それでも刺激的だった。
右脳と左脳をつなげて~とか言い出した時にはどうしようかと思ったが(もちろんそれも論理的には正しいことなのだけれども)、話がここは面白いから素晴らしい。
例えるなら野球の好プレー集を見ているようだ。
自分には絶対できないと分かっていながらも、美しさに魅了される。
頑張れば私も大前パワー身につくのかな・・・? でも知らないのと知っているのじゃ、物事のアプローチも違うだろうし楽しいと思う。
ボスコン vs マッキンゼー、マイケル・ポーター論
著者がボスコンとマッキンゼーそれぞれを経験しているため、これらの対比がたびたび出てくる。
Amazonのレビューを見ると片方に現在所属しているからもう片方をディスってるとか書かれているが、特にそういう印象は受けなかった。書かれている通りだとすれば、同じ結論に私も達するだろうし、ボスコンもマッキンゼーも所属したことがない以上、それ以上のことは言えない。
だけれども片方をボコボコにしているとか、もう片方を持ち上げまくっているとか、そういう印象は受けない。別にいいんじゃないか。
マイケル・ポーターをディスっているという評価もあったけれども、「これこれこういう理由では今はポーターの考え方は当てはまらない」という説明なのだし、別にこれもよいのではと思う。正直私は経済学者をよく知らないし、評価できるほどの立場ではない。ロジカルに展開された話をただ受け止めて、その材料が真であるという前提の上で考えるならば、著者のいうことももっともだろう。
まとめ この本は刺激的だし、ロジカルだが、あまり面白くはない。
フレームワークや思考法を説明する本は多くあるしちょっとでも興味ある人なら一度は触れたことがあると思う。正直なところ、この点他の本とそこまで変わりはない。確かに実務上こういう時に役に立つ、こういうフレームワークはあまり役に立たないなど説明は一通りなされているが、比較的限定的な例であったり、あまりピンとこないものが多かった。
一番あっさりとしていた「大前パワー」のセクションが個人的には面白かった。確かに「なら、どうするべきか?」を説明していないが、詳細に説明できるようなものならば誰しもできているわけだし、何らかの「気づき」のきっかけになる程度の今のレベル感でよかったと思う。読んでいて面白かった。
総合的に見て、長いし冗長なところもあるけれども、読んで損は決してない。仕事で使ってみたいなぁと思わせるような要素にあふれている、刺激的な本だったと思う。