意識高い系ブックレビュー

「MBA 100の基本」はビジネスの場面での抑えておくべきポイントを洗い出してくれる、親しみやすい一冊

「MBA 100の基本」はビジネスの場面での抑えておくべきポイントを洗い出してくれる、親しみやすい一冊

知識の要約本みたいなものは基本的に私は疑ってかかっている。「これ一冊で高校の数学が全てわかる」とか、「大学四年分の経済の知識を一冊に」とかそういうタイトルは大抵詐欺なのではないかと疑心暗鬼になっているのだ。一冊の本でそこまで身につくのであれば、授業とか他の本がいらないのでは? という考えだ。

私は楽して何かを済ませたいという堕落しきった人間ではあるが、いざ「これを使えば楽できるぜ旦那」と出されたら「そんなうまい話あるわけない!」と突っぱねてしまう性格だ。

だから本書を手に取った時も「うっそだぁ」と疑ってかかったのは事実だ。しかしやはり意識高そうな装丁に、ビジネス書ランキングみたいなところにででんと鎮座していたら、「いっちょ買ってみるか・・・」となってしまう、飛んで火に的な私がいるのだ。

結論として、決して悪い本ではなかった。知識集というよりかは格言集だが、どれも大事なポイントであることは確かだ。本書を足がかりに、次の読書へとつなげていくのも有用だろう。

この本はこんな方におすすめ

  • MBAの本格的な勉強をするつもりはないけれども、ざっくりと論点を整理したい方
  • 色々とビジネススキルに興味があるけれども、焦点を絞りきれない方
  • 広く浅く知識を身につけて、次の分野への指針を得たい方

ブックデータ

  • MBA 100の基本
  • 嶋田 毅
  • 単行本(ソフトカバー) 294ページ
  • 2017/1/10
  • 東洋経済新報社
MBA100の基本

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ずばり、どこまで有用な本なのか

まず結論から入りたい。この本は有用だ

100の基本とあるように、100のMBAで学ぶ(であろう)エッセンスを濃縮して、見開きで2pから4ページ程度で解説している。特に珍しいスタイルではないし、何かものすごいバリューを加えているわけではない

解説からはじまり、ものにとっては「ワンモア・アドバイス」というコラムがついたり、図がついたりしている。

「キーワード」としてページの下にタグのようなものがついていることがあるが、例えば「不満があるところにビジネスチャンスあり」という項目の下には「潜在ニーズ、面倒くさい、楽したい」と書かれている。まぁ確かにキーワードっちゃキーワードなのだが、これが何か役に立つとは思えないのが少々気になった。

本当にタイトル通りの本だし、基本的な要素をおさらいしていくイメージだ。

もちろん、1要素について使えるページ数が少ない分、本当に重要な要素のみ簡潔に触れているにすぎない。

ただ、その要素の選定がバランスよく、既知のものはおさらいにちょうど良いし、知らないものは「こんなん知っても意味ないな」と思うものはなかった。

100個も要素を集めればある程度は不発弾というか、「別にどうでもよかったな」というものがありがちだが、それはこの本はあまり多くなかった。むしろ、MBAで学ぶ知識から100の重要要素を選び抜いたのだと思えば、そうそう無駄なものは入ってこないだろう。

では、MBAレベルの内容なのか

私はMBAは持っていないのでこれを語る資格はないかもしれないが、MBAレベルの本ではないというのはよく分かった。通常1年から2年かけて取得するものなのだから、100のテーマに絞って要約した本のレベルに見合うわけがない。

仮に見合うレベルにこのページ数で書いたら、内容が高度に圧縮されすぎてちんぷんかんぷんになるか、本当に「当たり前じゃないの?」といった薄っぺらい内容になるしかない。

例えば「悪貨は良貨を駆逐する」という有名な格言があるが、その理由を理解するためにはただ悪貨の純度の話ではなく、そもそも貨幣とは何か、信用の淵源は何かというところから話さなければならない。

結論が大事だとはいえ、それをどう導くかも同じぐらい重要だ。数ページで簡単にまとめることはできても、その歴史を聞いて、数々の事件の結果としてこの命題があるのだと知らなければ、真に活用することは難しいかもしれない。

とはいえ、「こういう知識・考え方を持つと便利」という指針を出してもらうことはできる。MBAで学ぶ内容を全てカバーしているとは到底思えないし、よもや本当にそうだと思って本書を手に取る人はいないだろう。だが、少なくとも重要と思われるトピックの一部はきちんと入れていることだろう。

前提知識として頭の中に入れておけば、生来実際に勉強をする時の足がかりになることだろう。

ビジネス知識というよりかは、格言集

この本で出てくる内容は、基本的な格言みたいなものだ。

「戦術のない戦略では勝利への道のりは遠い。戦略のない戦術は敗北前の騒音である」
「きれいすぎるデータには裏がある」
「寿司屋とは、寿司で客寄せして酒で儲ける飲食店である」

この本は「論理思考」「マーケティング」「リーダーシップ」といった大まかな枠組みの中で、金言みたいなテーマを説明していく。だから持ち帰りは比較的多いし、「なるほどな」と思わせてくれることも多い。ただ基本と銘打っているだけに、「どっかで読んだことがあるような内容」が非常に多いのもまた事実だ。

だが「どっかで読んだことがあるような内容」はつまりは一般常識というか共通言語のようなもので、しっかり抑えておかないと問題がある内容と考えて良いだろう。だからそういった内容をきちんとおさらいして、身につけて理解するためにこの本を足がかりにするのは良いだろう。

だがあまり「学術的」というか、「実務的」な内容は出てこない。財務諸表の読み方、主要な経済指標、よく出てくるグラフ等の知識面はカバーされていない。

アドバイザリー・コンサルティング業務の人が好んで使いそうなロジックが主となっている。

まとめ 押さえるべきポイントを概観する分には良いが、すぐに結果にはつながらない本

ロジカルシンキング、交渉術、問題解決、経営戦略といった要素を「使えそう」な考えのまとまりにブレイクダウンしてくれて、持ち帰りやすい形式にしてくれている。

インパクトのある題名と、丁寧だがシンプルな解決、「ここを最低限、押さえておけばいい」といわんばかりの構成でそういう本を求めている方にはバッチリだろう。

当たり前ではあるが300ページ以下の本で主要なトピックを全て把握することは無理だ。それを承知の上で手を出して、「基本」を身につけるのは良いのではないか。

ただ当たり前ではあるが、格言集や要約では実務的な知識が身につくわけではない。フレームワークを覚えても、どのように適用するのか、実例を知らなければ結果は伴わない。実践を通しての経験があって(あるいは他人が経験したそれを詳細に学ぶことで)はじめて自分のものになるというのは、どんなものにだって言えることだ。

さらっと読めるし、内容も決して読んで損になるものではない。どこから手を付けたらいいかわからない、あるいは全体をざっと概観したいという方はまずは目次を開いてみて、「こういう内容を学びたい」と思えば手に取るべきだろう。

よりビジネスの場で役に立つ「ハード」な知識やスキルを身に着けたい方も、この本を読んでみるのは意外と急がば回れ的な意味で良いかもしれない。どこが自分に不足しているのか、どこをさらに強化したいのか、そういった点が見えてくる本だ。

あくまでもカタログ的な気持ちで読むと、プラスに作用してくれる一冊だろう。

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  • この記事を書いた人

内藤エルフ

2013年東京大学法学部卒業。都内の米系投資銀行勤務。英語と日本語のバイリンガル。意識高い系そのものが好き。スターバックスでMacbookを開いてドヤ顔するのが好き(しかし仕事のファイルは持ち出し禁止なのでネットサーフィンのみ)。なお、コーヒーの味の違いはわからないけど、日本とアメリカのコーラの味の違いは7割の確率で当てられる。

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