久しぶりに頭を蹴っ飛ばされるような衝撃の本を読んだ。
書いてあることは面白いけど、論理が飛び飛びでスノビッシュな作品だし、なんというか、意識高い系であるはずの私ですらぶっ飛ばされるぐらい意識高い本だった。
意識高い「系」ではなく、純粋に意識が高い。
そしてひたすらに馬鹿にされている気分だし、読んでいて気持ちがいい本ではないし、さらに言えばアイデアが次から次へと飛ぶのでわけがわからない。
この本はこんな方におすすめ
- 落合陽一氏の考える日本再興の方法を知りたい方
- 日本が抱える問題と、その解決法のアイデアを知りたい方
- とにかく意識が高い内容を読みたい方
目次(タップで開きます)
ブックデータ
- 日本再興戦略
- 落合 陽一
- 単行本(ソフトカバー)212 ページ
- 2018/1/30
- 幻冬舎
頭いいんだろうなというのは伝わる
頭がいい人なのだとはわかる。失礼な言い方になるが、お勉強ができるのだろう。
だけれども、アウトプットとしてこれはどうなのかな、という気にはなる。私ごときがコメントするようなことではないしおこがましいことこの上ないというのは分かっているけれども、わかりやすく書けてない時点で本として問題なのではないだろうか。
話の中で「矛盾しているんじゃ・・・」とか思うところはあるし、「いやなんでその結論になるの?」と思うところもある。
もちろん、ご本人の頭の中ではちゃんと1から100まできれいにつながっていて、ご本人が必要だと思われる箇所だけを出してきているのだろう。
とはいえ、読者が追えていなかったらそれは問題ではないだろうか。
申し訳ない落合さん、読者(少なくとも私)はあなたほど頭がよくないんですよ・・・。
嫉妬とかではなくて純粋に鼻につく
テクニカルイノベーションとかグランドデザインとかスキームとかもうとにかく意識高い系が飛び跳ねて喜びそうな言葉が沢山出てくる。私も飛び跳ねる。
でも、結局何が言いたいのかわからないし、序盤から「三つの戦略があります」と言っているものの、具体的に何をしたいのかよく分からない。
個々のセクターに注目した戦略を作るのではなく、全体的にみて戦略を組まないと日本全体を動かしていくのは難しいという主張はよく分かるし、納得いくところもある。だけれどもその説明に鎌倉時代が出てきたと思ったらクールジャパンになったり、美的感覚の話になってしまった。
著者がクソ頭いいのはよく分かったから、もっと私のレベルまで降りてきて話をして欲しいと思う。
著者の頭の中では世阿弥と日本が取るべき戦略が繋がっているのだろうが、なぜなのかを示してくれないと分からない。別に1から100まで教えて欲しいと言っているのではなくて、少しつながりがわかれば嬉しかった。
もちろん、素っ頓狂なことを言っているわけではないのはわかる。ぼんやりとだが、著者が言わんとしていることは分かるし、大まかな方向性は読み取れる。正しいのだろうなぁというのもある程度は分かる。だが、求めていたのはもう少し明瞭なものだった。
で、戦略とは?
ここが一番気になっていた。
落合さんがものすごい権力を持って日本をリブートしてくれるのであれば、何をするのか。できるできないは別として、こうしたら良くなる、変わるという話を聞きたかった。
理想論でもいいから、頭がいい人が考えるグランドデザインを感じたかった。
だが、あいにくその様な話は出てこなかった。
確かに地方自治体の独立性を促す仮想通貨エコノミーや人工知能の発達による多言語間の会話の変化など、確かになぁ面白いなぁと思わされるところはあったが、「戦略」や「再興論」に至るほどではない小ネタの様に感じられた。
小ネタは面白い。
色々な分野で活躍されている著者だからこそ、色々な小ネタが出てくる。
だがそれをパッケージにして「戦略」にするのではなかったのか?
日本のリーダーは、西洋的なリーダー1.0のモデルに縛られず、どうリーダー2.0やリーダー3.0に進化できるのか、そこが日本再興のカギを握るはずです。
本書p.202
上記の文章で終わっている章を見たときは、正直がっかりしてしまった。
そのカギを説明して欲しいのですが…と思ったら話はもうポートフォリオマネジメント的な教育の重要性に移っていた。(なお、この章は個人的にはとても共感できたし楽しかった)。
結論としては、あまり読み応えのない本だった。
読み応えのない、と言ってしまったらとんでもなくバッシングされそうだ。深い内容だし、色々な分野に渡って色々な話が展開されるし、確かに今後重要となりそうなモノの捉え方、技術や制度の改革に触れてくれているすごい本だった。だけれども、持ち帰りが少なく、まだかまだかと待っていたら気づいたら終わってしまっていた。
結局再興戦略は何だったのだろう。
著者が重視している分野は良く分かったし、その分野がどのような問題をはらんでいて、今後どのように変化するのが予想されるのかも分かった。
だが、それでどうしたら良いのだろうか?
私には、著者が具体策を出さずに「まぁ、僕はこういうところを問題視しているんですよね、嘆かわしい」と語っているだけのように感じられた。
読者が期待しているものを見せてもらえなかった、そんな気分だ。
具体策を全部出して欲しいというわけではない。
これほどに優秀で若い人間が、日本社会をどう見ているか。そして、どうしたいのか。
その後者を伝えて欲しかった。どうしたいのかがわかれば、私も超微力ながらサポートできるかもしれない。何がどう変化しなければならないのか訴えてくれれば、その方向にせめて自分のことだけでも舵取りできるかもしれない。未来に希望を持てるかもしれない。
だが、それはこの本では叶わなかった。
自分で考えろということなのだろうか?
それならそういうスタンスでも良かったはずだ。
疑問が残る本だった。